頭の芯に心臓がある。  なんていうのはもちろん比喩であって、本当にそんなことが起きているわけもないのだ が、シゲは自らのこめかみに人差し指を突き立てたくて堪らないという欲求に耐えていた。  要するに、頭が痛い。 「……っ、」  何でこんなことになっているのかという疑問も抱くものの、これといって明確に断定で きるほどの何かがあったという覚えはない。身に覚えがないにもかかわらず、ではなんで こんな目にあっているのかと理不尽な憤りすら感じるが、だからといって痛みが引くわけ でもなく、早々にシゲは不毛な感情を収めることにした。イラついていても仕方がない。 痛いものは痛い。  思えば、痛いという感情を素直に認めるようになったのは中学の頃からだったな、とお ぼろげに考える。あの何とも言えない関係のミルクティー色の髪をした同性に、いい加減 にしろと雷を落とされた。その後、彼の母親にまでつらつらと小言を言われて、そんな優 しさに触れるのは久しぶりだったから、弱っていたのも手伝って余計に骨身に沁みた、な んて経験まで思い出す。アレか、また同じように弱っているから、同じような状況を思い 出しているわけか。まったく、我が身ながら本当に進歩のない。  できることなら今すぐ横になって眠りに就きたかったが、残念ながらそうはいかない。 なぜなら、今シゲが存在しているここはまさにこれから練習が行われようとしているグラ ウンドだからである。これから走り回ってボールを蹴ることを要求されている自分が、こ こで役目を放棄することは基本的に許されない。 「――よし、」  小さく気合を入れなおして、シゲはゆっくり立ち上がった。この不調を無視しきること はできないが、せめて山白高校の一員として恥じない動きをするという覚悟はいつでも持 っている。大丈夫、本当に辛くなったらちゃんと自己申告できるようになったのだから。 「集合ー!」  遠くでホイッスルが鳴って、練習の開始を告げた。 「……お前な、ホントふざけんなよ」  見た目に反して言葉遣いの荒いタレ目が自分を睨み付けている。夕日はもうそろそろ屋 根の稜線に沈もうかというあたりで、中学のグラウンドは深紅に染められていた。伸びる 影が時間の経過を告げている。 「何やの急に。俺ちゃんと部活しとると思うんやけど」  部内を二つに分けてミニゲームをしている中、シゲが水野からのパスを胸で一回トラッ プして、不破が守るゴールにシュートを叩き込んだところだった。特に問題はなかったと 思う。もちろん、敵味方のゴールだって間違っていないし、ゲームだって続行中だ。白黒 のボールはコートの中央に戻されて、またスタートしようとしているところだった。 「タツボン?」  周りの同級生も後輩たちも、どうしたことかと足を止めている。ああ、もうすぐ部活の 終わりを告げる校内放送が入ってしまうのに。まったく、時間がもったいない。なんて思 うようになるとは、あの福島での一件があるまで思いもしなかったが。  しかし、肝心の水野が怒鳴りつける一言を発したまま、その目だけがシゲに固定されて 微動だにしない。怒鳴ったならその後の始末もつけるべきは水野なのに。 「……水野、みーずーの。アンタ学年主任に呼ばれてるわよ」  そのとき、割って入る声があった。ソプラノのトーンが固まってしまったその場の雰囲 気を壊してくれる。 「は?」 「だから学年主任よ。今ポカリ作りに行ったら通りがかったみたいで言伝頼まれたの」  ジャグジーを重そうに石畳の上に置いた彼女は、コートに居る部員にも分かるように声 を張り上げて告げた。その意図を、水野のすぐ横に居た高井が汲み取る。 「なあ水野、なんだったら今日はここで終わりにしないか? もうあと五分も残ってねー し」 「そうですね」  森長が続けて言う。 「それに、その方がシゲさんにとってもいいことだろうし」 「……森長、」 「いや、気づいてましたけど、部長が止めないのに俺が口出ししてもいいのかな、って思 ったんで」  水野に名前だけを呼ばれて、慌てたように弁解する森長の姿をぼんやり見つめていた。 何をそんなに必死になっているのだろう。第一、何に気づいていたというのか。 「……分かった。――よし、今日はここまで! 小島からポカリ貰ったら、一年は片付け 始めろよー」  何かに納得した水野は、森長が寄越す視線をそのままにして、唐突に部活の終わりを告 げた。そのまま小島のほうへ駆け寄ると、軽く礼を言って校舎内に入ろうとする。ああ、 学年主任に呼ばれていたという話だったか。それにしても。 「待ちぃや、タツボン、」  自分への説明がまだ終わっていない。シゲだけが取り残される形で動き始めていた周り の部員たちも、騒動の発端を思い出して一様にピタリと動きを止めた。 「シゲ、」  しかしその元凶は、予想に反して、まだ少し険の残る声だったけれど、先ほど睨み付け ていた物とは思えないほど綺麗な眼で、 「着替えて待ってろ」  一回だけ、一瞬笑うと、そのまま暗い校舎へ走っていった。  取り残されたサッカー部員はといえば。 「……えっと、」 「あ、……ほら、まだポカリ貰ってない人居るわよね? 早くしないとなくなるわよ!」 「お、俺まだ貰ってねーや、ちょうだい小島」  その姿が見えなくなって、ようやく皆が我を取り戻した。全員が少しの間とはいえ呆け ていたのだが、それに関しては誰も言及しようとはしない。  仕方ない。もうなんというか一種の諦めの境地に達している。  我らが部長はそれこそこの春の騒動や成田空港での別れを乗り越えて、一段と人間的に レベルがアップしたわけなので。 「……なんというか同情するわ、シゲ」  手渡されたポカリの冷たさが本当に有難かった。小島の横にどさっと腰を下ろす。なん だか今日はあらゆる意味でやたらに疲れた気がする。 「おおきに、小島ちゃん」 「いいえー。……それにしても、ゲーム中なのにそれを差し置いてまで水野がアンタを怒 鳴るなんてね。今度はなにしたのよ」 「今度は、て……別に何にも」  もう引退間近の三年生は、片付け等の雑務を後輩に任せて、のんびりとした時間を味わ える。それこそ、サッカー部を再起させたときは人数の関係で全員一丸となって片付けた ものだけれど、もう遠い昔の話になってしまった。  二人で話していると、ポカリのお代わりを求めているのか、森長が歩いてきた。 「あ、森長、」  小島が呼び止めるまでもなく、森長はシゲの目の前に来て足を止める。 「シゲさん、あの、」  なんだ、初めから目的はポカリなどではなくそっちか、と小島はそれ以上の口を挟むの をやめた。代わりに口を開くことになるのは勿論シゲだ。 「そや、なんやったん? さっきの、気づいとるとか気づいてへんとか」 「え、あれ? ……まさか自分で分かってないんですか」  現在形の質問をされて、改めて自分のしたことに思いを馳せるけれども、本当に心当た りがない。黙ったまま首を振ると、それを受けた森長は心底呆れたという風の溜息をつい た。 「何やの、」 「怒るところじゃありません。……ちょっと幾つか聞きますけど」  そこで一呼吸おいて、森長はシゲの意識をしっかり自分に向けきった。 「そのポカリ、何杯目ですか」 「……何杯目? 小島ちゃん」 「さあ……四、五杯目よ」 「朝起きたときだるくありませんでしたか」 「んー、多少は」 「昼ご飯はどのくらい食べましたか」 「……いつもの半分」 「で、さっきのシュートですけど」 「……」 「不破の裏を突いたんでゴールできてましたけど、でも、威力の程は分かってますよね?  同世代ナンバーワンを誇るFWのキックじゃなかったですよ」 「……あー、」 「ちょっと、まさかシゲ、」  止める間も避ける間もなく、小島の細くてそれでも少し荒れた手が、ぴたりとシゲの額 に触れる。止めて欲しかったのに、その触れ方は西の古都に居るあの人に似ていて酷く優 しかった。ああ、間違っても振り払えない。 「ちょ、小島ちゃん、俺まだ汗拭いてへんし、」  せめてもの抵抗を試みるも、 「佐藤成樹」 「……は、い?」  普段の彼女からは想像できないくらいの低い低い声が降ってきて、しかもそれが滅多に 呼ばれないフルネームで、……結果として思わず敬語になる。  そんな戦々恐々としているシゲに向かって、小島は学年一の美女の名が伊達ではないこ とを示すようにそれはそれは綺麗に微笑むと。 「帰れ」  言葉だけは辛辣に、声音はひたすら優しく、そんな言葉をシゲに届けた。 「え?」 「「え?」じゃないわよ。ホント、むしろ水野がよくぞまああそこまで我慢してたわね… …。いや、アイツも気づいててもどの程度かは分かってなかったのかも」  呪詛のようにぶつぶつと呟き始めた小島を見上げるが、もうまともな返事は期待できそ うになかった。完全に何かに怒っている。その対象が自分に向かっているのか、それとも 小島自身になのか、シゲには判断が付きづらかった。  仕方ないので目の前に居る森長を見上げると、じゃあ行きましょうか、とシゲの左腕を 引っ張り上げて地面に立たせた。行くってどこへ、と視線で訊けば、部室に決まってるで しょう、と不審な物を見る目でそう言う。 「ちゃんと着替えて部長を待ってないと、また睨まれますよ?」 「あー、そういやそないなこと言っとったなぁ……」 「全く、体調管理くらいきちんとして下さい、U−15代表さん」  はぁい、といい子の返事をすれば、全く仕方ない、とばかりに森長は苦笑した。  おとなしく制服に着替えて、ぼんやりと部室で座っていたら、十分もしないうちに水野 が帰ってきた。そして、わき目も振らずに、水野らしからぬ乱雑さであっという間に着替 え終わると、 「帰るぞ」  一言だけ、シゲの方を向いてそう呼びかけてきた。 「へいへい。日誌は?」 「……持って帰って家で書く。明日の朝練で香取先生に見せれればいいんだから」  左様で、とそれ以上話を延ばす意味もなくて、シゲは大人しく水野に付いて学校を後に した。帰りがけに、まだマネージャー業を終えていない小島が先を歩く水野に何かしら言 っていたとき、何故か安心したように笑っていたのが不可解ではあったけれど。 「さて、シゲ」  いつも一緒に帰るとき、草晴寺と水野の家へ別れる分岐点まで会話もなく歩いて、その 交差点で唐突に振り返って名前を呼ばれた。もう既に草晴寺の方へ爪先を向けていたのを 水野の方へ修正する。 「なに?」 「お前、体調悪いって自覚あるか? 今」  心の読めない目をしてそんな質問をする。水野の真意が分からないまま、シゲは肩を竦 めて正直なところを告白した。 「いや、あんまり。なんとなくダルいなぁとか、いつもと違うカンジはするんやけど」  この期に及んで嘘なんかつかない。そもそも、あんな風に睨まれるのもできれば御免こ うむりたいのだ。静かに怒っているときの水野は相応に綺麗だけれど、だからと言って睨 まれるのはやはり嫌だった。一興であることは否定しないが。  本当に、森長や小島が心配するような不調をきたしていることに、言われて気付いたく らいなのだった。 「……分かった。じゃあ、こっち来い」  言い放つなり、水野は無防備だったシゲの右手をするりと掴むと、ぐいぐいと自分の家 の方へ引っ張り始めた。当然ながら、草晴寺とは違う方向だ。 「ちょ、タツボン!? なにしとるん、」 「だって、あんまり体調悪い気はしないんだろ? でも、お前の思う以上に多分お前の体 は悲鳴上げてるぞ」 「……それで?」 「その状態のお前が寺に帰ったところで、どうせいつも通り生活するだろ、……同居人の あの人たちが何言っても。それじゃ治らねぇんだよ。だから、うち来い」 「……はぁ」  思わず変な声が口の端から漏れた。それくらいの暴論だった。  治らないから水野の家へ行く。そうすれば治る。強制的に看病できる。ああそうか、治 ってほしい、のか。  知らず、口元に笑みが浮かぶ。人に想われることの心地よさをここ半年あまりで沢山味 わっているけれど、今日のこれはまた特別だった。 「分かった。行くわ。――あ、けど真理子ちゃんは迷惑せんかな」 「大丈夫だろ。今朝突然百合子が外泊するとか言ってたから、夕飯の材料なんかも余って るはずだし」  到着した水野家は、いつも通りオレンジの温かい灯りが点いていて、自然と肩から力が 抜ける気がする。そういえば生まれた街も夜はこんな色をしていた。  ただいま、の声と共に水野が真理子に事情を説明すると、 「あらあら、それは大変ね。シゲちゃん、ちょっとこっちいらっしゃい」  なんの抵抗もなく、家へ迎え入れられた。少しの申し訳なさが靴を脱ぐ動作を遅らせた けれど、結局真理子を待たせるのも悪いという結論に達して、シゲは大人しく水野家のリ ビングへ足を踏み入れる。 「はい、体温計」  ソファへ座るように手で指示されて、そのまま腋に体温計を挟まれた。  水野は台所へ行って、スポーツドリンクをコップに注いで持ってきた。さっきも飲んだ のになんだかそれが無性に飲みたくなって、手を伸ばしたらその手が空を切る。というよ り、水野が近づくまで待てずに、力尽きて落ちたというカンジだった。 「あれ?」 「だから言ったろ、お前が思う以上に体調悪いって」  少し呆れたように言って、それでも水野はスポーツドリンクをシゲの空いている手に持 たせてくれた。やたら美味しく思うのは、やはり体が水分を欲しているからなのだろうか。  ピピッとデジタル音がして、真理子がその表示を確かめた。 「37.8度……」 「え、そんなに熱あんの俺」 「……お前真正のバカなんじゃねぇの」  普通気づくだろ、と半眼で見つめてくる水野の視線が突き刺さる。でも本当にあまり感 じなかったのに。 「……今日はシゲちゃんに泊まってもらうわ。お寺には私が電話しておくわね」  拒否権のない決定が下された。まあこうなるだろうなと予想はしていたけれど、改めて 申し訳なさが込み上げてくる。 「んっと、客間でいいかしらね。たっちゃん、ちょっと布団出してきてちょうだい」 「分かった。シーツとか適当でいい?」 「いいけど、敷き布団は二枚重ねてね。あと、掛け毛布は暖かいのを出していいわよ。た しかお母さんの押し入れに入ってたと思うわ」  その言葉を受けて、祖母の部屋へ向かう水野の足音が遠ざかる。ぱたん、とどこかのド アが閉まった音がして、シゲと真理子だけがその場に取り残された。 「……あの、真理子ちゃん、」 「お礼なら治ったときに言ってもらうから、まだ言わなくていいわよ」  シゲの機先を的確に封じつつ、さっきあの子にスウェット持ってきてって頼むの忘れた わね、と独り言を呟きながら、真理子はシゲのエナメルバッグに手を伸ばした。 「部活したのね? じゃあ洗濯物あるでしょう。洗っちゃうわね」 「そないなこと、」 「いいのよ、気にしなくて。あら、……シゲちゃん、ちょっと辛くなってきた?」  シゲの顔を見て、真理子は綺麗な眉を僅かに寄せた。この家に来た時より、確実に不調 が顔や随所に出てきている。けれど、金髪の奥から聞こえてきた声は、 「んーん、平気や。おおきに真理子ちゃん」  予想に反して、明らかに強がっていると分かる言葉を紡いだ。  その瞬間、真理子はシゲが自らの不調に気付かなかった理由を悟る。ああ、そんな心持 で生きていたら、いつか本当にガタが来る。  まだたった十六歳のくせに。 「……シゲちゃん」 「ん?」  ソファの上でぐったりと背もたれに体重を乗せている少年に向きなおって、真理子は口 を開いた。 「ちょっと、頑張るの止めましょうか」 「へ、」 「少なくとも、自分の体調が分かるくらいの余裕は必要よ」  気持ちを張って生きていると、少々の不調は「まだ頑張れる」と無意識のうちに見逃し てしまう。その程度でへばっていては駄目だ、と意識のどこかで思っていたから、きっと こんなになるまで自分の体調に気付かないように、そして感じないようにフィルターが掛 かってしまっていたのだ。 「ちゃんと、自分のことを気にかけてあげてね。でないと、たっちゃんも私も和尚さんも 部活の皆も、とても心配するわ」 「……俺、頑張ってへんけど」 「いいえ、充分シゲちゃんは頑張ってます。まずそれを認めないことには、また同じこと を繰り返すわよ。ただ体調が悪いだけならまだしも、熱が出るまで気づかないなんて相当 だわ」  真理子はシゲから目を離さずに、静かにその隣に腰かけると、少しかさついた主婦の手 でシゲの金髪を何度も何度も梳いた。金色にしてから徐々に傷んだ髪が、その所々で引っ かかっている。 「でも、……頑張ってるて認めたら、俺もっとアカンようになる……」  目を開けているのが億劫になったのか、すぅ、とシゲの目蓋が降りていく。これは思っ たより悪化するかもしれない。それとも。 「どうして? いいじゃない、“アカンように”なって」 「え、」 「そんなときに寄りかかるために、貴方の周りには沢山の貴方を心配する人がいるのよ。 和尚さんとか私とか、たっちゃんとか、ね」 「……、……真理子ちゃん、」  心が頑張るのを止めたから、そのフィルターが剥がれ落ちていっているのか。 「なぁに?」 「……頭痛い、なんかぼうっとする、喉渇いた、……しんどい、」  その通りだった。今まで気づかないふりをしていた、いや、本当に気付いていなかった 症状が、気持ちが、その口を突いて出てきたのだ。 「しんどい、あー、なんや急に色んな所が痛うなってきた気ぃする……」 「痛くなってきたんじゃなくて、元々痛さはあったのよ。それをシゲちゃんがちゃんと感 じれるようになっただけね」 「んー……」  ああ、本当に悪いんだな、と再確認したところで、すぐ後ろに水野が居たことに真理子 が気付いた。 「あ、たっちゃん、」 「布団敷き終わったぞ。あと、着替えるだろうから俺のスウェット置いといた」  言われずとも必要な任務をこなしてきた息子に、更なる重要課題を与えるべく真理子は 立ち上がるとシゲの腕を引いた。 「じゃあたっちゃん、シゲちゃんを寝かせてあげてくれる?」 「母さんは?」 「ちょっと薬や夕飯の買い物に行ってくるわ。宜しくね」  成程、と納得した風に水野は頷いて、普段の気丈な姿からはおよそ想像しえない様相に なっているシゲを客間へ引きずって行った。というか肩を貸してどうにかして歩かせた。  恐らく、ここまで体調を崩していたとしても、これまでのシゲならこのように病人の風 体を晒すことはないだろうと思う。ただ、先程真理子が諭すように説教をしたおかげで、 今は水野にまでこんなぐったりした姿を見せているのだ。  これからは、寺の同居人たちや他の人にも、体調がおかしかったらちゃんと自己申告出 来ると思う。自立することと一人で頑張ることは違うのだと、きっと今日シゲは分かった と思うから。 「……なんや、本当に情けないなぁ」  どうにか着替えて、体を横たえるとそんなことを言ったので、 「バカ、お前の情けない姿なんて結構知ってる」  そう言って笑いかけたら、薄目を開けたシゲの顔が少しだけ赤みの増した気がしたけれ ど。 ※小島ちゃんは、シゲが寺に帰って大丈夫なのかを話しかけに行って、水野の家へシゲが  連行されるのを聞いて安心したのです。  シゲはこうやってちょっとずつ成長するんだと思います。っていうかこの子は15歳ま  でが色々とアレすぎる。  では09年の11/10記念はこれにて。